紫雲膏

owl2003-12-21

id:aliceprin:20031218#p1 さんの記事により知った漢方薬「紫雲膏」。尋常でない手肌疾患にほとんど surrender(降伏)状態だった私は早速購入してみた。
「知っていてもしょうがない」をひたすら書き連ねるのがこのサイトの本懐なので、いろいろと書いてみる。
手近な薬局で「紫雲膏」を所望したところ、「奥へどうぞ」とお店の奥のほうのカウンタへ案内される(!)。いろいろと説明をしてくれた。大まかに列挙すると

  • 色や油をあちこちに付けかねないので、昼間は使用しないほうがいい。(日中活動時は別の、普通に販売しているハンドクリームを使おうってな話)
  • ひどい部位には「てんこ盛り」にするといい。(でも服とか布団に付くとえらいことだよってな話)
  • 紫色は服に付くとまず取れない。(睡眠時などには塗布後に手袋をしようってな話)
  • 手荒れの原因になりそうな作業時にはビニール手袋などをしないと根本的な解決にはならない。(結局のところ予防が肝心だってな話)

まあ、予防ができるぐらいなら現実苦労はしないわけで、さまざまな「手仕事」現場にあってはそれが難しいから大仰な薬品・民間療法エトセトラで試行錯誤しているわけなのである。そう、判ってはいるのだ。
てっきりチューブ入りが出てくるものと思っていたら、プラスチック製軟膏瓶が封筒に入れられて、イカニモ漢方という風情の代物であった。安くはない。20g で \1,000.- (税含まず)。普通のハンドクリームの試供品と「ハンドパジャマ」なる就寝時用手袋(要は、白い普通の綿手袋である)もサービスでくれたのでまあ良しとしたい気分ではあった。(ケンコーコムではチューブ入り 20g を \800.- で販売しているようだ。)

日本薬局方による配合(1540g 中の成分)は

  1. シコン(紫根):120g
  2. トウキ(当帰):60g
  3. ゴマ油    :1000g
  4. ミツロウ   :340g
  5. 豚油     :20g

だそうで、万が一口に入ってしまっても害はない(が、美味しくはない)。紫根はムラサキ科の植物、当帰はセリ科の植物。いずれも根を乾燥したものが生薬として用いられる。(参考:ツムラ生薬ハンドブック
紫雲膏は江戸時代の医師、華岡青秋が創薬した「日本産の漢方薬」とのこと。しもやけなどの手荒れ肌荒れのほか、汗疹などの発疹、切り傷、火傷、あと痔にも効果があるらしい。熱心な愛好者をもつ、との記述も見た。私(おうる)は、今回初めて知った。



外観は、特徴的な赤紫色、ちょうど紅芋のような。指の温度ですぐゆるむ、のびの良い軟膏である。(そりゃま、主成分ごま油だからね。)
さて、実際に数日試してみての印象。肌が再生してゆく、というのを実感できるその効力は確かに素晴らしい。アカギレのような切り傷は、概ね一晩あれば塞がる。塞がりきらなくとも、症状はかなり緩和されるようだ。痒みを取る効果(痛みを緩和する効果)は薬自体にはあまり無さそうで、特にすみやかに鎮痛・沈痒したい場合はほかの薬を使用したほうがいいのかもしれないなどと私(おうる)は思った。(既に皮膚が切れてしまっている場合など、紫雲膏を擦り込むことによって一時的に痛痒が倍加することもあるようだ。)
普通に(調味料の)ごま油を手に塗ったり、オリーブバージンオイルを塗ったり、といったことと比較してどの程度違うのかに関しては、私(おうる)は判らない。恐らくは植物性・動物性油脂のうちその人と相性のよいものを選んで塗布していれば、それだけで手荒れ防止の効果はかなりあるのだろう。しかし、油そのまんまより軟膏状に調製されたもののほうが使い勝手がよいに違いはない。また、紫雲膏の使用後はとりわけ「一旦はもはや皮膚でなくなってしまった組織が、ワタシの身体の一部として復活している」というような実感がある。これはただの油やハンドクリームでは得難いものであり、このあたりが生薬の「薬効」なのかもしれない。
問題は、この薬の色とにおい。薬局では脅かされたが、手指に薄くのばした程度なら、服への色移りは問題となる程のものではなかった(私(おうる)の手指がとりわけ水分・油分をよく吸収するということによるのかもしれないが)。においのほうは…さて困った。ごま油と生薬からなる独特のにおいはかなりきつい。「なにかどこかで嗅いだことのあるにおいだが…」と考えるうち、思い当たって余計憂鬱になった。このにおいってば、まさに「カメムシのにおい(←ひとによっては読まないほうがいいかもしれないので伏字)である。
このにおいさえ我慢できれば…というより、周囲に我慢させることさえできるかどうかが、常用できるかどうかの重要な分岐点となりそうだ。しばらく嗅いでいると結構慣れはするようだが…。
とまれ、肌疾患の万能薬的な雰囲気の強いこの薬、一度ぐらいは試してみる価値があるというのが私(おうる)の結論。
id:aliceprin さん、御紹介ありがとうございました。)



おまけの追記。手荒れしないための方法としては、とにかく手肌の水分と油分が失われないように留意することだ。一般に水仕事が良くないぐらいのことは知られているが、何故「お湯が良くない」かといえば「その温度が油脂をよりよく溶かす(融かす)」からであって、冷水を使えば解決するかといえばそんな simple ではない。そのほか、ガムテープを使った作業、段ボールや書籍(とりわけ古書)を扱う作業などペーパーワーク全般、アパレル関係等の布仕事なども手の油分・水分を確実に奪うため手荒れを起こしやすいが、意外に見落とされがちなのが土やホコリ。これらも手の潤いをものすごい勢いで吸収してしまうので、特に冬場、ほかのことの予防も兼ねて、手は清潔にしていたほうがよい。体質や手作業の内容にもよるだろうが、私(おうる)の経験からすれば手はこまめに洗ったほうが手荒れは深刻になりにくいように感じる。
勿論できることならば、手洗い後には「潤い」を補給するナニカを塗りたいところ。私(おうる)のおすすめする市販のハンドクリームは、

あたり。(この冬の新製品は開拓していないので、データが古くてすみません)