共鳴

100% 完全に音声を再現できる録音機ができたとする(ありえない話だが、仮にできたとする)。この録音機でもって、自分の声を録音して、聞いてみた場合、100% 同じように聞こえるだろうか?
答えは「No」。他人の声なら 100% 同じように聞こえるかもしれないが、自分の声は同じに聞こえない。自分で発した自分の声は、頭蓋共鳴など様々な体共鳴を同時に聞いているから、空気を経由して鼓膜やマイクに届く音とは音源からしてまったく異なるものなのである。
体共鳴が豊かなほど、巾と広がりを持った豊かな声になりうる。生声で歌うときには、この共鳴をいかにコントロールするかに血道を上げるわけである。当然これは訓練によってのばし、鍛えあげてゆくわけだが、私(おうる)の印象ではこれはかなり生まれ持ったものがあるように感じている。
歌手は自分の身体が楽器である、というが、楽器としての致命的なハンディは、リアルタイムで音色のチューニングがどうやってもできないというところにあると私(おうる)は思っている。私(おうる)は声楽以外の楽器の経験がないので(しかも高校時代までの浅い経験しかない)自身の中で比較はできないのだが、「楽器を遣う」人間としてこれほど不安なことはないように思うし、実際、そういう不安を抱えて歌っていた。