直径 10数mm のガラス玉のむこうに「ネット都市伝説」の危険と恐怖を感じる。

それはまさに恐怖。何故かといえば、本来 trivia とは、なんの役にも立たないが故におもしろいという側面を持つ、つまり、知っていてもいなくても実用上、あるいは生活上、何ら困ることのないという性質のものだ。これは逆にいえば、間違っていても誰も困らない、ということに繋がる。
ネットのようなアンバランスな超高速媒体にこのような話題がかかると、そのおもしろさ(≒話題性)故、あっという間に広まり、それが正しいか、しくないか、の如何にかかわらず既成事実化される危険がある。(というような話は以前にも書いた*1。)
「ビー玉」=「B玉」って、いったい誰が言い出したんだ*2*3
ビー玉の製造工程を見れば*4わかるが、近所のガキもとい御子様方に与えることができるほど歩留まりが悪い(不良品が大量に出る)とは思えない。それに、ガラスなのである。駄目だったらまた融かして使えばよい。(当時)貴重なガラス原料をそんな無駄遣いするとも思えない。
よくよく考えてみたまえ、そりゃ別にいいけど、下町のガラス職人が「あーこれは A玉…こっちは B玉」なんて用語を使っているなんて、なんだか不自然ではないですか? 笑っちゃいませんか?(…いや別に言ってても構わないのだが)
蛇足だが、ラムネ瓶にはゴムパッキンが入っているからネット上の各所で力説されている「ガラス玉は真円*5でないと漏れる」というのは概して当たらない。
もともと「B級品」とか「B品」といった用語は、傷などがあり正価で出すことはできないが、通常使用に際しては概ね遜色なく、値引き対応などによって世の中に出せるレベルの不具合品、といったような意味合いである。規格外で「ラムネ玉」として使用できないのであればそれは「B」ではない。Cランク以下、単なる不良製品である。
なんのことはない、ビードロ(vidro*6)の玉だから、ビー玉、それだけの話じゃないの?
因みに三省堂大辞林」を(goo辞書で)「ビー玉」を引いてみたが、同じことが書いてあった。
ラムネ瓶の中に入っている玉は「ラムネ玉」、結構。まあ、そりゃそうだろう。ビー玉とラムネ玉はそもそも異なるものであるってそれも確かにそりゃそうだ。しかし、ラムネ玉だってガラス製である。だからビー玉で構わない。ついでにもひとつ、ビー玉は英語で marble という。つまり、マーブル模様の入っているものが本来の「ビー玉」である。当然ながら「ラムネ玉」にはマーブル模様は入っていない。だから「ラムネ玉」は「ビー玉」ではないといえばまさにそのとおりなのである。でも現状は、なんの文様も入っていないガラス玉もビー玉と呼ばれるし、marble と呼ばれている。そんな 4 の 5 の言うべき話でもないという気が私(おうる)にはしてならないのだ。ラムネ瓶から取り出したら、誰が「ラムネ玉」を「ビー玉」と区別できるのか。(いやできまい。)
とはいえ結局のところ、これが合っていようが違っていようが、生活に何らの支障をきたすことがない以上、釈迦力になるだけ愚かなのかもしれない。
「ラムネに入ってるのはビー玉じゃない」という言説は、ビー玉=「B玉」語源説を含めて、熾火研究所的にはガセ。おもしろければなんだってあり、という思想は、私(おうる)は、嫌いだ。蛇足的にいえば、とりあえず疑ってみるということをせずに鵜呑みにする、言っていることのおかしさに気付かず鵜呑みにする、「灰色の脳細胞」*7も、私(おうる)は、嫌いだ。…力いっぱい自戒を込めて。

■ 【追記】傍証として

とある消息筋から、The Wind of Blessing (2005/10/06) 経由、語源由来辞典(ビー玉の項)
というわけで、やっぱり熾火研究所的には「B玉説」3万回却下。数の暴力には屈しない方向で。(でも最近は数にモノを言わすのがトレンドらしいから、参ったなぁ。)

*1:id:owl:20050814#web

*2:2005/10/05 に関西ローカルの TV番組で紹介されたらしいということはわかった。ここ最近にブログでさんざんとりあげられたのは恐らくここが「震源地」であろう。ではここがルーツなのかというとそうでもないらしく、2005/02/25 のエントリで「B玉」説を掲げている人もいる。番組ではたぶんネットでちゃちゃっと拾ったネタをそのまんま喋っちゃったのではないかと思われる。

*3:「ビー玉」の話題だから <b> タグで囲ってみましたという細かいネタ振りに気付く人なんかひとりもいないばかりか私(おうる)自身ですら 1週間後には忘れ去っているという公算大。

*4:かくいう私(おうる)も TV 映像で「ラムネの玉」の製造工程を見たことがあるていどなのだが。
参考:http://www.glassman.or.jp/chishiki/mame/tp_chi10.html

*5:真球のことを言いたかったものと思われる

*6:ポルトガル語でガラスのこと

*7:これは皮肉ですよ。