日本語は難しい、とりわけ外来語はもっと難しい

もともと「crystal」は「ガラス」を意味しない。述語としては「結晶」。日常語としては「水晶」を指す。紛らわしいので「水晶」は敢えて「rock crystal」と言ったりもする。*1もし、とある「クリスタル」が「ガラス製」であったならば本来的にはそれはイミテーション(偽物)だ。
鉛入りで透明度の高い特殊ガラスであるところの「クリスタルガラス」という商品、そしてその商品名である「クリスタルガラス」という語が普及するにつれていつの間にか人々の意識の中で「クリスタル」=「ガラス」という、事態を更にややこしくするすり替えが起こったらしい。
「クリスタル」=「クリスタルガラスという特殊ガラス素材」という"省略"はまだいいにしても「クリスタル」=「ガラス全般」となると話は全く違う。そもそも「crystal」には広義として「透明なカタマリ」全般を指すという拡大解釈があるわけだが、その中でもニュアンスとしてはどちらかというと「ガラ玉でない、貴重な宝玉」という方向性がある。「クリスタル」という語を「クリスタルガラス」から知った人々にはこうしたコンテクストが無いから「ここにクリスタルって書いてあるじゃない、だのにこれはガラスじゃないの?」などという、全く逆のことを言ったりしてくる人が出てくる。
なにはともあれ、とある特定の物質が「何となく」「クリスタル」であったりするというシーンだけは全くもってありえない。これだけは間違いない。…いや、液晶とかは「何となく結晶」であるかもしれないか。うううう。

*1:時計業界界隈、あるいはコンピュータ業界界隈では「crystal」=「(水晶)発信子」である。