「苦髪楽爪」

owl2003-05-20

苦労していると髪がよくのびる、楽をしていると爪がよくのびる、という諺(若しくは「言い習わし」)。読みは「くかみ・らくつめ」または「くがみ・らくつめ」。
実際にはどうなのだろうか。苦労したからといって髪が伸びる、というようなことはなさそうだ。むしろ、ストレスを貯めると円形脱毛症や抜け毛が増える。よくのびる、というよりは、よく抜ける、のほうが当たっていると言えよう。睡眠不足は髪の毛によくないというのもしばしば聞く話であるし、心身に負担がかかった状態はむしろ健康な髪の毛の育成にとってはマイナス要因のはずだ。どちらかというと、苦労…即ち「なりわいのうれい」に身をやつし、整髪・散髪などに頻繁に行くことができぬ故、髪は荒れ、無様に長くなるということが「苦髪」の実体らしい。
苦労していようが、いまいが、髪はのびる。ただし、栄養状態が悪いと、その間にのびた髪はその栄養状態なりの貧弱なものになるそうだ。長髪の人だと、荒んだ生活…例えば、論文の追い込みで碌なものを口にしていなかったとか…の期間に成長した部分の髪の毛というのは、見るとわかるのだそうである。
一方で爪のほうはというと、普通に生活していて普通に手作業をしていれば、爪は減る。普通、いちばん爪ののびる速度が速いのは親指であるが、必ずしも爪切りをした際に切る爪の量は親指のそれが多い、というわけでもない。例えば人によっては「薬指の爪がいちばんよくのびる」と感じているかもしれない。それは日頃の生活で、薬指の爪をいかに使っていないか、という証拠みたいなものである。
当然、手仕事・水仕事の類いをほとんどしない、つまり、楽をしている人の爪は減らないから、よくのびるように見える。
爪は髪と異なり、栄養状態や健康状態によってのびる速度が変わるという噂もある。また、髪と同じように、栄養状態が悪ければ、その間にのびた爪はその栄養状態なりの貧弱なものになるそうだ。つまり、弱く、脆い爪になる。
人並みに苦労していると爪が減る、というのが、「楽爪」の実体ということのようだ。
爪にはビタミンE がいいらしい。皮下組織まで浸潤しやすいホホバオイルにビタミンE の配合されたオイルを爪の根元、甘皮の部分によく擦り込んでマッサージしてやると爪がよくのびるとの話。



苦労しているか、楽をしているか。そんな主観的な身辺状況がそうそう選択できるはずもないのだから、髪や爪ののびる速度というような客観指標で「苦」や「楽」を評価されても、それはかなり余計なお世話だ。よしんばそれが当たっていたとしても、である。ただ、外見に人生の苦労を滲ませるのは得策ではないし、なによりクールではないだろう、とはいえようか。