ハト受難?

owl2003-05-14

今日見かけた 1羽のドバトは、見るからに黒かった。
いっしょにいた他のハトと比較してもあからさまに黒い。体色に関する個体差の範囲内ではあろうと思われるので、特に珍しい(珍種・珍個体)というわけではない。この程度の色なら探せばいくらでも見付かる。珍しさから言えば一時期話題になった「白いカラス」(ハシブトガラスアルビノ個体)のほうがよほど珍しい。
ドバトはもともと「カワラバト」が家禽化され、再野生化したものであるといわれている。ただし野生種として扱われることはほとんどなく、各種の「鳥類調査」でもリストや確認種数・個体数から除外されるのがほとんどである。学名もカワラバトのそれ(Columba livia)がそのまま使用されている*1。「いい加減、野鳥として扱ってもいいのではないか」との意見も出されたりしているようだ。
さて、ずいぶん前のことだが、都心部において色の濃い、黒っぽいハトが増えている、という話が出たことがあった。つまり、色の薄い、白っぽいハトが減少しているのだ、という。このときの説明は、カラスがハトを襲う、このとき、白っぽいハトのほうが目立つので、白っぽいハトが選択的に駆逐され、結果、黒っぽい個体が優占するのだ、というものだった。
正味な話、にわかには信じがたい。カラスがそんなにまでハトを襲撃しているとは思えないし、そもそも、白いハトのほうが目立つ、黒いハトは目立たない、という論拠にも充分な説得力を感じない。ならば、極端に白い、撮影・手品etc.用のハトが逃避し、普通のドバトの群れに混じっているアレは、たちどころにカラスの餌食になるというのか。実際には、あまりそのようなこともなさそうである。
黒いハトは愛嬌があってかわいらしい。せこい一眼レフを抱えてうろうろしていた頃は「間違ってもドバトなんか被写体にするもんか」などとうそぶいていたものだが、「鳥を撮る」ということに関してその難易度は多少低いぐらいの話である。ハトの仲間の飛翔は意外なほど格好いい。初心者はよく猛禽類と間違えるという。(因みに「猛禽類」とはワシ・タカの仲間に代表されるような、肉食の鳥類。「猛禽」というとワシタカだけと考える人も多いようだが、フクロウ類やモズ類も立派な猛禽である。)そんなドバトが「野鳥」に加えられる日はいつ来るのだろうか。



過激な人達の中には、「カラスは野鳥ではない」とか「トビは野鳥から外せ」、あまつさえ「オオタカ?あんなものは野生だなんて言えない」なんてことを言う人々もいるようだ。そもそも、日本ではいわば最もありふれた鳥のひとつなのにリストからはそのただ一種だけが除外される*2という、大いなる歪みがあることを無視して進むことはできない。一部ではハトのことを衛生害獣扱いする向きもあると聞くが、その割には「野生ではない」としたりする。「野生か、否か」なんて、有益な議論であるかどうか、私にはよくわからない。

*1:Columba livia var. domestica と、変種(varietas = variation)扱いをしたりもするもよう。

*2:勿論他にも除外種はあって、たとえばインコなんかは野生化して数10個体が群れを作ったりしていることも実際あるようだが、除外される。だが、ドバトとは規模も歴史も違いすぎる。