なにが役立つかなど

owl2003-04-26

※ Watcher の方へ。お願いですからもう放っといてください。



私は学生時代、地質学を学んでいた。学部では鉱物学・火山学・水文学(「みずぶんがく」ではない。「すいもんがく」である)・地球物理学・古生物学…など、地球科学に関連するさまざまな分野の基礎を学ぶ。そして、例えば人工地震探査の手法であったり、土壌の含水率の測定法であったりとか、さまざまなテクニックも学ぶ。
生来の方向音痴その他の要素が災いして「快刀乱麻の Geologist 」にはなること叶わなかった私(おうる)だが、また生来の実験好き・道具好きから、かなり面白がって大学に入り浸っていたものだった。
地質学・鉱物学を志す者が避けて通れないのが、岩石薄片の作成。透過光の顕微鏡で覗いて観察するため、岩石をプレパラート(ガラス板)に接着して薄く薄く研磨する。その厚さ、20ミクロン。当然、ガラス板に接着する際、接着面が僅かでも平坦でなければ、貼り付け後に研磨した際、あっという間に無くなってしまう。また、研磨剤は、一般的な薄片作成の場合 #180、#400、#1000、#1500 といった番手のものをよく使用する(数字が小さいほど粗い。紙ヤスリの番手と同じもの)のだが、「どの研磨剤でどこまでやればいいか」を的確に感知し、効率よい(無駄な時間のかからない)作業を為すには経験と勘が必要である。
結局、私(おうる)は薄片による岩石の観察が研究の重要部分を占めなかったので、テクニックもそれほど向上せずに終わってしまった。自分で満足のいく薄片はとうとう一枚も作れなかったが、その「心意気」だけは学んだ。

数年後、このとき得た知識と「勘」が、銀細工の研磨で曲がりなりにも活かされることになろうとは、その当時には誰も知らないのである。