「ひげは抜くのがおもしろい」 (returns)

僕のは抜かないでください

きっかけは、某歴史教養系クイズ番組だったと思う。寝る時間もないほど忙しかった大岡越前が眠気を覚ますためにやっていたこと、それは「ひげを抜く」だった、そんな内容と記憶している。余談だが、ひげを抜く閑があるのなら、わりと忙しくないんじゃないんだろうか。
ほう、と思い、試しに少し伸ばしてから、抜いてみた。残念ながら眠気覚ましの効果はほとんどなかったが、「ひげは剃るもの」という固定観念はその時点、私(おうる)の中で瓦解した。
ひげは、抜くのがおもしろい。…そんな話をすると、男性は一様に怪訝な表情をするが、女性の同意は比較的得やすいようだ。やってみればわかる。そんなところなのだろうか。
とはいえ、ひげを抜くのには若干のリスクを伴う。まず、甚だ時間を要する。剃ってしまえばものの 5分、しかし本気で抜けば 20分では終わらない。それに、場合によっては毛穴が荒れ、にきびを誘発したり、抜いたあとにかみそりをあてるとかなり出血したりする。ちょっとした地平の転換が必要だ。さらに、抜いたあとの毛穴から新たに生えてくる毛は、場合によってはより強力なそれであったり、素直に出て来ず皮膚の中で横向きに成長してしまったりすることもある。(無理矢理引っぱり出したら 8mm ほどの長さがあったことも。)
しかしながら、男性陣が顔をしかめるその主な理由である(と思われる)ところの「めちゃくちゃ痛いんではないか?」という予想に反し、これが思ったほど痛くはない。そして、生えたての毛は細く、先端が尖っているので、それほど目立たないから、濃さによっては毎日抜かずとも構わなくなる。
毛抜きは少しいいものを使うとよい。先端が合うことは勿論、多少力強くつまんでも先端の噛み合わせが揺るがないものがよい。使えないとまでは言わないが、ドラッグストアやコンビニにある \300.- 程度の毛抜きでは、この理想的な感じはなかなか得られないものだ。
ほんの 0.5mm ぐらいしか出てきていないひげも、抜いてみると 3mm ぐらいの長さで出てきたりする。これはかなり新鮮な驚きをもたらしてくれる。
剃るよりも楽とは、どうにも言い難い。万人には決してお薦めできないが、機会があったら試してみるのもいいかもしれない。



再掲ネタだが、元文を見ずに新たに書き下ろしてみた。