フレデリックの灯した火

owl2003-03-27

スイミーが目玉になるとき
ペツェッティーノが崩れたとき
かたつむりが小さな殻を背負って語るとき
あおくんときいろちゃんが変身してみせるとき
そして フレデリックがおひさまを分けてあげるとき



以前、そそのかされて思わず木に登り、火を噴くカエルのおはなしの原案を書きおろしたことがあった。私(おうる)のなかではもうキャラクタは動き出していたから、書き始めると 2時間でストーリーができた。主人公は誰も気付かぬうちに、恐らく本人も気付かぬうちに、燃え尽きていなくなってしまう。そのかすかなぬくもりだけが、みんなの肌に残る。そんなおはなし。
いま、レオ=レオニの絵本について回想してみて、私(おうる)がその当時思い描いたストーリーは、実は「フレデリック」ISBN:4769020023)と寸分違わぬ流れの中にあることに気付いた。自分で書いたものは何度も読み返したはずなのに、こんな圧倒的な事実に一度も気付かなかった。無論、及ぶべくもない。勿論、較ぶべくもない。でも、私(おうる)の書きたかったストーリーは、実はこれに他ならなかったのだ。
心境は複雑。
でも、フレデリックが冬のあの日に灯した小さな明かりは、もはや意識すらできないほどしっかりと根付いてしまっていたということでもある。そして、私(おうる)が自ら創ったキャラクタに彼と同じ仕事をさせたのも、ごく自然な成り行きだったのかもしれない。

炎のカエルが春の日を見ることはもうない。それは、私(おうる)がそのように運命づけたから。