二酸化炭素エアダスター CD-30ECO を評価してみる。

先日触れた*1エアダスター、何故か私(おうる)の手許にある。交換用ボンベ 3本も何故かある。

まあ、「何故か」じゃないだろ、という御意見は軽く吹き飛ばしておく。で、いろいろ感じたことを書いておく。

  • 分量・残量がわかりにくい。
    • ボンベ 1本の容量が「65mL(67g)」とのことだが、これがどのくらいの量なのかわからない。例えば、現在主流である HFC152a の「400mL 前後」と比較してどの程度なのか*2わからない。また、ボンベが重く、振っても液体の音がしないため、残量が持った感じでわからない。
  • 安定が悪い。
    •  
    • 容器の底部が広がっているのは不足する安定感を補うためのようであるが、それでもまだ足りない。ノズル附近に重たいレギュレータが入っているのと、ボンベ自体も重く*3、重心が高い。であるからして、すぐこける。
  • 予想以上にボンベがでかい。
    • そして重い。要するに、想像以上に物々しい。
    • とはいえ、エアダスター本体も従来品と比較すればスリム且つコンパクト。(重いけど)
  • 圧力はそこそこ。
    • もっと強力なのを期待したが、レギュレータがしっかり効いているのであろう、従来のエアダスターよりは若干強いかな、程度のパワーに留まっている。気温の変化がどの程度影響するのかは、やってみないとわからない。
    • 当然だがレギュレータに圧力調整バルブはついていない。
    • 容器を逆さまにして吹くと(やってはいけないと注意書きがあるが)、エクステンションチューブが「発射」される。
  • 使っててもボディが冷たくならないのはよい。
    • 圧力容器がむき出しではないので、従来品エアゾール缶のようにエアダスターを持っている手が冷たいということはない。ただし、中のボンベは 5秒も吹けば*4しっかり冷えている。
  • 確かに臭くないし、可燃性ガスでないという安心感には替えがたいものがある。
    • 勿論「全くもって無臭」とはいかない。
    • 消火器としては使えない。(使えればいいのに。)
    • 内部にガスが滞留しやすい OA 機器などでは、HFC152a などの代替フロンの場合静電気や火花による引火を考慮しなければならなかったわけだが(シュレッダー、コピー機などが特に危険)、CO2ではそんな心配をする必要がまったくない。
  • なんだかんだ言って高いよね。
    • 定価では \3,980.- 、実売価格でも \3,000.- 程度、交換用ボンベも 1本あたり \1,000.- 以上する。これだけの価格がして、その上で、従来品と比較してどの程度使えるのかは全く未知数とあっては、なかなか手が出ないのは当然の話である。なにしろ、HFC152a + DME の製品ならば、最も安いケースでは 420mL 1缶で通常価格が \398.- である(ホームセンターの PB 品)。コストパフォーマンスでは到底太刀打ちできるレベルではない。
    • ボンベが使い捨てなのは勿体ない。せめてリターナブルになりはしないものか。
  • なんでもっと大々的に宣伝しないのだろう…それは、たぶんいろんな理由がある(と想像される)。
    • ちょっと間違うだけで結構危険なんではないか。例えば、使用中の(使い切っていない)ボンベを外すとかなりとんでもなく危険なことになるのだが、そのへんあんまりしっかり書かれていない。
    • CO2による酸欠等の危険性についても未知数。常識的な使用頻度・量であれば問題は無いはずだが。また、従前の品(HFC + DME)と比較して特に危険度が高いというわけでも無かろう(窒息性ガスである点は変わらないから)。
    • 無臭なのは、使用感に関してはプラスだが、安全性の面では逆にマイナスなのではないか。
    • 容器を逆さまにして噴射すると液体の CO2 がガンガン噴き出すかというと、案外そうでもない。この点は、レギュレータを用いた CO2 エアダスターのほうが直噴式の従来品より却って安全なのかもしれない。ただし、故障した場合は…
    • 「氷殺ジェット」の発売中止にみられるような「逆風」はあるのかもしれない。
    • 今や CO2 のほうがフロンより悪名高いガスというふうに世の中ではなってしまっているのかもしれない。そうなると、どれだけ従来品より環境圧が低いと力説したところで「CO2なの? じゃ、駄目じゃない」と(そういうような先入観だけでもって)一蹴される可能性は、ある。

総じて思う、キャッチコピー通り、そんなにいいものならば企業もどんどん採用していけばいいのに、そのへんにどんどん売り込んでゆけばいいのに、どうしてそうなっていないのだろうか、と非常に疑問なのである。別に私(おうる)も熾火研究所も別にサンワサプライの回し者ではないので、現状のこの製品がどうとか言うつもりはない。製造にさほど特殊な技術もノウハウも必要ないと思われるこの CO2 エアダスターをどんどん製造し、価格をこなれさせて、普及させればいいのに、と思う。
あと、同じスペックでもっともっとコンパクトにできるだろう。そういう方向性も追求してゆくべきではないか。
とは言ってみたものの、本当の本当には、ベビコン*5か何かで普通の空気を再充填可能なエアダスターを開発してくれるのが一番いいのではないかと思う。ついでに再充填サービスなんかあってもいいかもしれない。文具店や、ガソリンスタンド、自転車屋さん? …などでエアダスターの再充填ができるよう整備する。ボンベカートリッジのデポジット回収システム(アスクルなどで配達時に回収とか)でもいいかもしれない。やってできないことはないだろう。
結論。過渡期の製品として、熾火研究所的には CD-30ECO を支持する。「こういったモノはマニアが買い支えないとね」。グッズマニア、文具マニア、etc... を自認するかたは即注文ですよ。

■ 追記:コクヨも出してた。

こちらも含めて全く知らなかったわけで。
ボンベ交換式ではなく、こちらはワンウェイのエアゾール缶タイプらしい。メカ好き・ギミック好き・変形合体物好き(ってどんなだ)にはボンベ式に軍配が上がるだろうか。いずれにせよ、割高である。
なお、サンワサプライのほうになく、コクヨのほうにはある情報として「使用している二酸化炭素は石油精製の際の副生成物を利用しており、二重にエコロジカルである」というようなことが書いてある。ふーん。

■ さらに追記【2008/01/18】:ナカバヤシも出していた

写真用品メーカーであるナカバヤシが出していたのは、CO2 と DME の混合ガスによるエアダスター

DME 配合なので不燃というわけにはいかない。また、逆さまにしても液漏れしないというのは、通常用途にはよくても、熾火研究所的には残念なスペックとなってしまう。

*1:→→ http://d.hatena.ne.jp/owl/20071218/goods

*2:重量と分子量で考えると、CH3CHF2 = 約66 の HFC152a は 420g(460mL) では 6mol 程度。一方の CO2 = 約44 の 二酸化炭素が 67g では 約1.5mol 。気化した際の分量は 1/4 ということになる。少ない。あからさまに少ない。
実際に使用した際の「体感分量」はどうなのか、何秒吹けるのか、みたいな、なんらかの基準が欲しいところだ。

*3:未使用で 1本 273g ぐらい、つまり、3/4 が圧力容器の重さである。

*4:註:説明書きでは「噴射時間は 2〜3秒に区切ってご使用ください。」とある。

*5:つか、熾火研究所がエアブロー用のベビコン欲しいってだけの話ではあるんですけど。