俗に情報危機のほとんどは人的要因に端を発すると言うが

(ここで言っているカテゴリの)「情報」がすべて artificial なものだから、「ひとのてがつくりしもののおちどのほとんどはひとのてによる」ってそれはまあ当然といえば当然なのだけど。
電車に乗って席を確保し、一息ついたあたり、まだ汗は引かないが車内空調の恩恵をようやっと体感できるようになった頃、ふと気付いた。改札を通ってから*1ここまで、携帯電話をどこにもしまっていない。鞄にも、ポケットにも。勿論手の中にも無い。
…あ
駅のホームのベンチだ。
そうだ。改札に携帯をかざしてから、メールでも見るべなーなどと思ってポケットにしまわずに手に持ったそのままホームへと出た。ホームのベンチに座り、隣の席に携帯を置いた。そのときは、見える位置に置いたこの携帯をよもや忘れることもあるまい、とか、綿私(おうる)の頭が考えていたのを覚えている。しかしその後がまずかった。コンビニ袋を畳むために鞄を同じ席へと置いた。袋を畳んでいるうちに電車が来た。畳んだ袋を鞄に押し込み、鞄を手にとって電車へと急いだ…まさに教科書どおりのミスの手口である。
もう 2駅来てしまっている。すかさず電車を降りて、反対方向に乗る。こうした時間が、意外と長く感じるものだが、何故か頭の中は冷静なようだった。というか、冷静なようでいて、実は思考力を失っていたのかもしれない。慌てなかったのは、考える力を失っていたからなのかもしれない。もし行ってみて既にベンチになかったら、まずは改札窓口か。で、公衆電話から携帯にかけてみるか…ええと携帯の番号って、090 からだったっけ? 拾ってくれた人にはお礼をしなくてはなるまいか。どう考えても 1000円では却って失礼だが、5000円、出すべきだろうか……ぐるぐるぐるぐる。
元の駅に着く。最初に乗った電車の発車時刻を覚えていたので正確な経過時間がわかる。この時点で、8分。長く感じるどころか、実際長い。これだけあれば深刻なハッキングが充分に可能だ。できれば置き忘れたその場所にそのまま放置してあって欲しい、それがベストシチュエーションだな、などと思いながら、ホーム越しには確認できないので移動すべく階段を降りる。そして目的のホームの階段を上っているまさにそのとき、横のエスカレータで電話をしながら降りてくるひとりの男性の姿が。もしやと思って注意深く見ると、見覚えのあるストラップ(というかキーホルダー)だ。あんなものを携帯につけているのは携帯ユーザー 6000万だか 7000万だか知らないが*2、数多おれども私(おうる)ぐらいのものだ。
男性もこちらの目線に気付いたようで、「あ、これ?」と。「そうです」と私(おうる)。そのまま、エスカレータ越しに受け取る。「ありがとうございます、助かりました。」と声をかける。下のほうから「よかったねぇ」と声がする。これは私(おうる)にとっては「いい人が拾ってくれて、よかった」の意味となる。
予期せぬパターンに少々動揺していたのだろうと思う。そもそも携帯を置き忘れる時点でどこかしら判断力や思考力が低下しているわけであるが、ともかく私(おうる)はそのまま階段を上がり、そのまま本来の目的方向の電車に乗った。
電車内の冷気にあたりながら、頭も少し冷やし、冷静になっていろいろ考えてみる。よくよく考えれば、私(おうる)は先程来より重ね重ねとんでもないことをしでかしている、ような気がする。具体的にひとつひとつ挙げるまでもない、一歩違えばどうなっていたかもわからないようなことばかりだ。これを暑さの所為、ばててる所為、疲れている所為といってしまうのは簡単だ。疲れている割には、幸運だった、という言い方はできるのかもしれない。
こんなつまらないミスをもう二度としないために、なにか対策を考えねば、と思いつつ、具体的にはまだなにひとつ浮かんでいない。

*1:モバイルSUICA使徒(まわしもの)なので、改札で取り出したのは 100% 確実なのである。

*2:こちらによると、2007年07月末現在でなんと 9855万だそうだ。このまま行けば 10月末には 1億突破する。