善行か、はたまた残虐行為か 其乃壱

owl2007-07-26

昼は、大抵奈落の底にいる。奈落の底で昼食用に買っておいたいなりずしなどを食べる。午後になったら、漆黒の奈落を這い上がり、地表に出る、そういう日課である。
今日も今日とておにぎりなどを食べようとしたら、普段は何もない、光すら見えぬ奈落の底に、見慣れぬ物体があることに気付いた。未知のクリーチャーか、あるいはその半腐乱死体か、と一瞬ぎょっとしたが、よくみればそれは小さなぬいぐるみであった。しかしこれがかわいくない。私(おうる)にとっては、かわいいか、かわいくないかで言えば、気味が悪い。日記か、テキストサイトかで言えば、ブログですか。その髪型は何という病気でスカ? …余談はさておき(というか余談ですらないが)、きっと人の立ち入れぬ場所とも知らず、誰かがついうっかり放り込んでしまったのであろう。私(おうる)にとってかわいかろうがいくなかろうが、どうかすると元持ち主はこれを失ったことにより、昨晩は枕やそのほかいろいろな部分を濡らしていたのかもしれない。そうではないかもしれないが(もとより「いろいろな部分」の部分は「そうではない」可能性が滅法高いわけだが)、そうだったら(もっとも「いろいろ(以下略))かわいそうだ。
夜、適当な針金を見繕ってぬいぐるみのしっぽに巻き付け、奈落の縁のそこそこ目立ちそうな場所に引っかけておいた。元持ち主が探しに来れば、すぐに見つけるであろう。因みに「奈落の底」と「そこそこ」を掛けたつもりなど無い。
ただし、今晩はきっと雨だ。明日以降、元持ち主が見つける頃には、そのしっぽから逆さ吊りに吊されたぬいぐるみはこれでもかと濡れぼそり、色は褪せ、生きたままカラスにデリケートな部分をついばまれ、悪童に落書きされ、しかも額には「肉」と書かれて、そのむごたらしい足許には何故かラ・フランスが。
今のうちに謝っておこう。私は間違っておりましたと。