AM 放送を録音してみよう、という技術的な試みに名を借りた遊び

いくつかのソースから、日曜の夜に AM ラジオでちょっと趣向の変わった音楽番組をやるらしい、という情報を仕入れた。ちょっと聴いてみたい。で、聴くついでに、録音もしてみたい。といっても、現状、私(おうる)が可能な録音方法といったら PC で音声取り込みぐらいしか無い。(VHS ビデオデッキに音声だけ流し込むという荒技もあるが、にしてもいま空のテープが無い。)でもおもしろそうだ。いま、アナログ地上波の TV 番組は PC で録画している。専用ソフト任せということもあり、何時間だろうと問題なく録画が可能だ。これが音声だけとなればもっと簡単なことなのではなかろうか。だが、簡単であれ、実際に試してみなければできる、とは言えない。そんなわけで、目標は 2時間のラジオ番組をまるまる取り込み、1個の MP3 ファイルを作る。それを、いま手許にある装備でなんとかする。
なんか知らぬが AM の入るラジオは手許にある。イヤホン端子もあるから音声の出力は可能。しかし、ドンピシャのケーブルは無い。探せばパーツはたぶんあるから、今から自作してもいいのだが、…んー。 試しにビデオキャプチャRCA 端子にラジオの出力を投入してみた。…おお、聴ける! これなら、録画ボタンを押すだけで「音声のみ、映像まっくろ」の mpeg ファイルができあがり。ここから 音声を MP3 で抜けば…
ってこれはなにかが猛烈に嫌だ。
しかもラジオの感度が悪い。ケーブルの長さが限られていることもあり、良好な受信状態が維持できない。リアルタイムで聴いて、それで終わりにするだけならまあいいにしても、録音して残せる音質ではないだろう。関係あるか無いかは不明だが、現在の生活環境においては、種々のインバータ機器が中波 AM の受信を阻害するのだそうだ。あるような気もするし、無いような気もする。ただし、放送時間中になんらかのバースト的ジャミングが入ったらそれでおしまいだ。
ラジオが駄目ならどうすればいいというのか。そもそも PC で録音することを前提に考えている。音源も PC にあるのが、よい。なにか無いのかな、ストリーミングとかなんとかで、ネットラジオみたいなことで商業放送局の放送をそのまま聴けてしまうそのなにか。
…探すと、あるものですな。
そうしたサービスはいくつもあるようだが、 PeerCast というのがそのなかでも有名なひとつらしい。web 検索すると親切な解説などもあったりするのでここでは深い説明は避けるが、簡単に言うと、重要なのは「リレー」という概念。ユーザーは聴きたいものを聴いた分だけ通信帯域資源を解放することで理屈上無尽蔵にストリーミングを提供できるというシステムのようだ。もっとも、利用に際してポートを開放することは(最低限のマナーではあっても)強制ではないため、自分の目的に合致しているかどうかの試用の段階でリスクを負う必要は無い。
探してみると、果たせるかな、目的のラジオ局のストリーミングがひとつ、見つかった。そのチャンネルは、日本の民放ラジオ局 2局の放送をステレオの右と左に振り分けて 2局同時に流しているというものであった。早速聴いてみる。
Winamp が起動し、再生が始まった。再生ソフト上で音声の左右バランスをどちらかにいっぱいまで振れば、一方の放送だけが聞こえる。音質は、少なくとも何かのおまけでもらったへなちょこラジオよりははるかにマシであるようだ。…と思ったのだけど、よくよく聞いているうちに問題が判明。バランスを右いっぱいに振っているにもかかわらず、微かに左チャンネルの音声が混じるのである。ミキシングのミスであろう。というか本来、2ch ステレオというのは、右と左で別個の音声を流すことを前提に設計はされていない。AM ラジオに音信はつきものとはいえ、これはちょっといただけない。
しかも PeerCast 自体の安定度が未知数。実際、聴こうと思っていたチャンネルが検索リストに上がってこないという現象も見られた。これはちと困る。
さてどうしたものか。…で、Winamp のメニューをいろいろ見ていたところ(実際は「Winamp で録音できないものか」と思って調べている最中だったのだが)、サービスリストみたいなところに「SHOUTcast」というのがあった。名前が似ているから PeerCast と同じ種類のサービスなのだろうか? 試しにラジオ局名で検索してみたら、なんと、あった。いけるね。
しかしこちらも問題が発覚。約7分以上連続して再生(受信)を続けると、バッファアンダーランのような状態になるらしく、音声がぶちぶち切れる。これは正直 PeerCast のそれより酷い。ただしこれは再生を一旦停止して、新たに再開すればすぐに復帰する。しかも、その開始時点は先程の終了時点より遡ること最大で数十秒。つまり、かなりだぶって再生されることがわかった。だから、録音してから編集してやれば、音声的に切れ目ができることはない。ただし、6分ないしそれ以下のスパン(できれば曲の途中などでは切りたくないため)でもって手動で再生停止→再開と繰り返さなくてはならない。つまり、録音中はかかりっきりである。そして、録音後も、音声編集ツールでもって実に20箇所以上の編集をしなくてはならないということだ。なかなか大変だぞ。
といいつつ、録音できた時点から先のことを考えるのはまだ早い。どうやれば録音できるのだ。どうも新しめの PC 音源なら音声出力を内部的にそのまま入力に回せるらしいが(まあ、これはできて然りなんだろうから褒める程のことではない)、私(おうる)の現有装備ではできない。そういう場合はどうするかというと、音声出力(LINE OUT)と音声入力(LINE IN)をケーブルで直結する。我がマシンの場合は、出力は USBオーディオ、入力は MICROPHONE 端子。いずれも 3.5φ イヤホンジャックである。これを繋ぐには…あった。ステレオ3.5φプラグ - RCAピンプラグ(♂)(赤白)ケーブル 2本。RCA♀ - ♀変換プラグアダプタ 1個。さらに↑上記の作業のためにモニタリングしなければいけないから、ステレオ3.5φ(♂) - ステレオ 3.5φ(♀)× 2 分岐ケーブルを挟み、ヘッドホンを繋ぐ。力業にも程があるが、所詮は AM ラジオ放送の録音、繋がってさえいれば多少のローファイっぷりはものの数ではない。
MICROPHONE 入力が確保できれば、あとはどんなソフトを使っても大概平気だ。私(おうる)は「Audacity」というソフトを使用した。フリーソフトにして MP3 の編集加工ができる貴重な存在である。
かくして、録音に 2時間かかりきり、編集にやはり 2時間以上(編集ポイントは約 6分に 1回やってくるわけだが、どこでそれを挟んだかなど覚えていないので、結局全部聞かざるを得なかった。エンベロープと再生音を頼りに、だぶっている部分を手動で 1個 1個カットしてゆく作業は、それでも、想像したほど大変なことではなかった)。苦労の末、12MB 超の巨大音声ファイルが 1個できあがった。ビットレートは 16kbps、サンプルレートは 11,205Hz 。ここまで落とす気はなかったのだが、何かの操作ミスで気付いたらこうなっていた。そもそもの音質が低いのでこれだけ低レートでも問題は無かったが。
ファイル長は、約110分。2時間の放送を、時報から時報まで収録しているので、本来の時間より 10分ほど短い。全体に気付かぬぐらい寸詰まりになっているのだろう(アナログプロセスでの変化ではないらしく、音の周波数の誤差は無いもよう)。バッファアンダーラン(的な何か)の原因もこのへんにあるのかもしれない。直そうと思えば(Audacity で)直せるが、気になるようなものではないし、手間なので(というか、処理時間がかなりのものになるのは想像に難くないので)、放置。
まあ一応、できるということはわかった。欲を言えば、もう少しスマートにできれば、もっとよかった。

■ 軽く追記

こういう商品があることを知った。(まだサンコーかよとか言うな!)

音声出力も USB になってくれないと意味は薄いような気もする。ただ、PC 的ラジオ生活をしようと思ったら今のところベターチョイスとなるのかもしれない。Podcast 的ラジオ生活をするのなら他の選択肢もあるようだ。
いずれにせよ今の私(おうる)には直接関係が無い。