映画は苦手である。

事と次第によっては読書よりも映画鑑賞のほうが苦手かもしれない。特に、異常な世界観を持った作品なんかだと予告編をちらりと観ただけで魂のあらかたを持っていかれてしまう。持っていかれた分の魂は二度と戻ってこないから、消耗が著しい。復元にはしばらくを要する。復元といっても、たぶん復元しているんだろうと思い込んでいるだけなのかもしれず、欠損した魂に順応しただけなのかもしれず、本当に復元したかどうかは疑わしいものである。
いっそのこと全部持っていってくれれば楽なのだが、必ずいくばくかは残されるので、その残されたいくばくかは凄まじい寂寥感に悶絶を続ける。この悶絶が収まるにはしばらくを要する。収まるといっても、たぶん収まっているんだろうと思い込んでいるだけなのかもしれず、振動状態を定常状態として受容しただけなのかもしれず、本当に収まったかどうかは疑わしいものである。
私(おうる)にとってはシュールな作品のほうがホラーやサスペンスなんかよりよっぽど恐い。