「『歩くこと』はお金のかからないホビーである」…ほんとうか?

正解は、否。確かに「総じて、比較的お金のかからないホビーである」ことは確かだ。しかし、ワークアウトとしてのウォーキングでなく、オモロイものを求めて街中を歩く場合、つい余計な消費をしがちである。買い食い然り。飲料然り。夜間に歩けば店は開いていないから平気だろうと思うとこれがまたさにあらず。書店、とりわけ古書店はかなり遅くまで営業していることが多く、これがまたジャンク好きのハートをがっしりと掴んで離さない。そういうようなグッズ好きの魂を持つ人間が徘徊を企てるならば、よっぽどお金を持たないとか、危険なところは通らないよう賢明なルート選択をするとか、タイムトライアルにするとか、なにか思い切った策が必要なのであるが、場当たり的な徘徊にはその冒険への保険として最低食費交通費として充分な金額は持っておかねばならないし、最初から何があるか完璧にわかっているならそれはただの社会科見学だし、焦って歩いていいことなどひとつもない、というか、そんなもののどこがおもしろかろう。
つまりこうだ、衝動買いの癖がある人は、思わぬ出費もハプニングのひとつとして位置づけるぐらいの心構えで臨むのが、正しいワンダラーのあり方である。「俺、こんなところで、なにやってんだろ」感は徘徊の重要なスパイスのひとつであるから、意表をついたところでありえない出費というのも、うまくこなせば妙味である。
ただ、ほんとうに気をつけなくてはいけないが、買い物をしたならしたそのあとのことである。偶然「激安スーパーのタイムセール」に運良く遭遇して、トイレットペーパーとボックスティッシュを超破格で入手できたとする。感じのよい古本屋さんを発見し入ってみたところ、長年探していた本が全巻まとめて置いてあったとする …あなたはその先、それを持って、歩くのか?
ドライブの場合、不意に買い物があっても、基本的には積むことができる。歩きの場合は、そうはいかない。よく芸能人が TV 番組などで商店街なんかを散策しながら次々と買い物をしたり飲み食いしたりしているが、現実の徘徊もああだと思ってしまってはいけない。何かを買えば、何かを喰えば、その重みがそのまま肉体を地球の中心方向へと引っ張る。
こうした場合の熾火研究所的おすすめは、かような事態が生じたと認識したその瞬間に、徘徊モードを解除し、すみやかに通常モードへと復帰することである。「歩き」は、今日はそこで終わり。こうしたときの為にも、地図などの地理情報検索装備は、持っていたほうがいいのだ。
歩けるときに、歩けばいい。 逆に言えば、歩けるときは貪欲に歩く。