現金の飛び交う工場

「入出金機」だとか「紙幣計数機」だとか、現金に関わる機械装置は多種多様なものがある。純国産の機械も多い。普段は来店客の目に触れることがほとんどないのであまり知られていないが、大規模店舗やショッピングモールのバックヤードに行けば必ずそういった機械が設置してある。銀行や信用金庫などに行けば来店者の目に触れないカウンタの下には必ずこうした機械が設置してある。こうした機械はその性質上、ぎりぎりの高速・高精度・高耐久というトリレンマを実現している謂わばメカトロニクス(なんて死語を使用するひとも最早皆無だが)の急先鋒である。
世の中には、当然のことだが、こうした機械装置を製造している会社が存在する。一般にはメジャーでないが業界内では超有名、独自技術で市場を寡占している会社なんかもあるようだ。そういう会社には装置を実際に製造する工場が存在する。そしてその機械は当然ながら出荷前に 1台1台動作チェックが実施される。当たり前といえば当たり前だがそのチェックは工場内で実施される。そして、考えてみればわかるはずだが、そのチェックには本物の現金が使用される。
その工場の生産ラインには、工場に似つかわしくない大量のゲンナマが飛び交っているのだ。しかも、全ての金種について、さらに言えば適度に使用された新券でない紙幣で、耳を揃えて百万円とか用意してある。恐らく「現金係長」とかが管理していて、お金を数えて 30年、白手袋をして目つきの鋭いひとだったりする。
でも、よくよく考えてみれば、そういった機械装置は 1台につき余裕で何百万円とかしたりする。生産ラインにその機械が仮に 100台あったとすれば、それだけでもう数億円がそこで動いていることになるのだ。そう考えると、比較すれば 100万円ぐらいものの数ではないと思えてくる。