ガイアのそれ(→番組 WebSite)

「これだけ曲げれば上出来です。
向こうは文句無く付けるでしょう」
造船の聖地、呉にて、「撓鉄」という特殊な職人技*1を若い職人に伝授している。3日間かけて若い職人が曲げた鉄板を、ベテランがチェックし、「ごくろうさん!」と肩を叩く。
テロップでは「これだけ曲げれば上出来です 問題なく溶接できるでしょう」と出ていたが、これは謂わば超訳だ。向こう、つまり、溶接方。職人が職人へと仕事(成果品)を受け渡す、そのシビアな緊張関係がこの一言に練り込まれているのだ。

マツダでは工場内に「道場」(Dojo)と呼ばれる本社直轄セクションがいくつも設置され、それぞれの分野で匠の技術が若手の職人にみっちり教え込まれている。エンジン組立の「道場」では、あらかじめなんらかの「異常」を仕込まれたエンジンに火を入れて、その動作音からどこにどういう異常があるのか見極めるという「テスト」が 100回、200回と繰り返される。修行期間は 2年間。
焼き入れの匠は、焼き入れた鉄の硬度を(HRC で)正確に言い当てる。刀鍛冶職人にもまったくひけを取らない。マツダロータリーの「切っ先」であるところの、ローターの「頂点」部分の焼き入れはエンジンの基本性能と耐久性を大きく左右するのである。

職人、いいなあ。

*1:「ぎょうてつ」と読む。数cm の厚みを持った鉄板を、バーナーと冷却水ホースの 2本だけで思いのままに彎曲させる。