房総半島 小島弧仮説(Boso-Peninsula microarc hypothesis)

さまざまな資質を欠くがゆえ(必ずしも本人的資質に限らぬ)学の途からドロップアウトして久しい私(おうる)であるが、そんな私(おうる)とてなんにも考えずに過ごしていたわけではない。…というか、こういうこと(雑念ともいう)を頭の中で転がし続けながら仕事するものだから、助教授から一発目に「君は功名心があるんじゃないのか」なんて言われてしまうのだ。
私(おうる)が学生をやっていた頃、東京湾の成因については依然としてはっきり判っていなかった。最大で 3000m という驚異的な層厚の沖積層がその謎のひとつであり、その昔には「堆積物の重さで沈降が起こる」などという学説が教科書にまで掲載されていた。よーく考えよう。軽いものは重いものの中に沈んでいったりしない。
「なぜ、そこに、それがあるのか」。偶然にも日本という島国に生まれた以上、「日本が何故、島なのか」は「知っておきたい謎」のひとつである。日本海という海が、如何にして誕生したのか。そして、偶然にも東京に生まれ、千葉県内の大学に所属した以上、「東京湾が何故、そこにあるのか」も、知り得るならば知っておきたい謎である。
私(おうる)はウェゲナーのように考えた。そしてふと思いついたのが「大陸と日本島弧の関係」と、「本州と房総半島の関係」は、同じなのではないかと。だから、日本海の成因が判れば、東京湾の成因も自ずと判る。あるいは、逆も然り。
私(おうる)が頭の中だけで考えている「成因」は、プレートの沈み込み境界の大陸側背後に沈み込みによる「引き」の力が発生し、湾の沈降と島弧の海洋側への移動が励起される、というメカニズムだ。これを実証するにはプレート構成物質の粘性などを考慮した流体力学的シミュレーションが必要となると思われ、「物理・数学ができないくせに理系を選んだ」私(おうる)には、はなから手に負えるものではなかった。
「10年前の教科書には「嘘」が堂々と書いてある」地学の世界、私(おうる)が学んでいた頃とは状況も一変しているのかもしれない。ただ、コトホドサヨウニ世界は「知ら(れてい)ないことばかり」であり、ちょっとぐらい知り得たところで世界がつまらなくなることなどありえない。
(とは言ってみたものの、その作業に加担できない以上、私(おうる)自身はこれっぽっちもおもしろくなどないのだ。さいきん昔話ばかり書いているような気がするが、これもなにかしら、フラストレーションの所為だろう。)