ペリエ

私がこの飲料の存在を知ったのは小学 5年生のときだった。電子楽器の中に余裕で「トランジスタ」が使われていた頃の電子キーボード。どういう経緯なのか、これに附属してきたよくわからないイラストマガジンみたいなものにそのごく短いコラムは書かれていた。(余談だが、ミック・ハガティなんて名前を見たのもその冊子だった。)「コカコーラと双璧をなす」と賞された、緑色の美しい瓶。天然の炭酸水という、それまでの「My常識」に無かった存在。(もっとも、これは私(おうる)が知らなかったというだけの話。天然の炭酸湧水というのは数こそ少ないとはいえ日本国内にも存在する。そして例えばイタリアなどでは、ミネラルウォーターといえば炭酸入りが普通で、「炭酸入り」というと超強炭酸、「炭酸抜き」というと微炭酸だ、なんていう話もあとで聞いた。)
その頃、近所のスーパー「三徳」にはそれはあり、「生協」にはそれはなかった。近所の酒屋にも「リボンタンサン」はあったが「Perrier」は無かった。そういう品物なのだな、と、なんとなく思った。いずれにせよ、小学生である私(おうる)には手が出なかった。よしんば買ってもどうするのやら。無駄に貧しく無意味に厳しかった家庭、「炭酸飲料が欲しい」などといえば、それだけでどれほど揶揄され、叱責されただろうか。
「図画工作」の授業で、粘土の器の中に砕いたガラスを入れてそのまま焼き、器の底にガラスの「水面」ができる…という課題があった。「ペリエの瓶を使ってみたい…」とそのとき思ったが、そのためだけに無駄遣いなどできなかった。結局お酢の瓶を割って使った。淡い水色で、それはそれで美しかったのだが。
そんなペリエの瓶がペットボトルになったのも、いわば時代の流れ、仕方のないことなのだろう。
私(おうる)とて、店頭で見かけて、それがガラス瓶であったら、持ち帰る重さを考えててしまい買うのを躊躇したかもしれない。私(おうる)自身ですらもはやその程度だ。
#N/A である私は、メニューにペリエを発見した際には、これをたのむことにしている。その微妙な年齢感覚が「私好み」である。(もっとも、そういうお店に行く機会など、ほとんど無いわけだが。)
【後日追記】 ガラス瓶もなお健在であるようだ。