旅行前症候群

…といっても、そういう Syndrome が実際にあるわけではない。
簡単にいうと、ちょっと大きな旅行が近付くと気分や機嫌が悪くなるという、そんなようなもの。
私(おうる)の場合は、出掛けようとして親に置いていかれた経験や、泥遊びをしてその罰で海に行けなかった経験(※実際は、このとき海に行けなかったのは別の原因があったようだ)などが、遠出をする前の不安を助長しているように思える。とにかく、出張にしろ慰安旅行にしろ、出掛ける前には気が塞ぎ、行動力が落ち、著しく不機嫌になったりする。行き先のなにかしらに関して不安な事項があったりすると、症状?は重くなる。旅行の準備が大変だ。やる気がないから、なかなかはかどらない。でも、忘れ物があるととても嫌だ(といっても、毎回必ずなにかしらを忘れる。それが重要でないものであることを祈るのみ)。だから、本来旅行では荷物をいかに削るかがひとつの大きなポイントとなるわけだが、「これは要る、これは今回は使わない、これは 3個あれば充分…などと考えるのもかったるい。従って、やる気のないときほど荷物が大きくなる。



大学のときも、フィールドに缶詰になる際の出掛けは非常に憂鬱だった。とくに、研究に先が見えない(というか、既に見失っている)ときなど、フィールドへ出てもどうしていいのかわからないのは目に見えているから、複雑な心境に更なる拍車がかかる。
その日も、荷物の準備をしてみたものの、どうにも気合いが入らない。「う゛〜〜、いぎだくねえぇ〜〜」などとうめきながら、うつぶせのまま動かず、しばらく突っ伏していた。すると、いつもは挑戦的な態度丸出しのキジトラ「ガブ」が、なにを思ったのか、私の頬を舐め始めたではないか。ざり、ざり、ざり、と。びっくりして目を開ける。そして抱きしめた。普段はライバル心むき出しで、手に穴があくぐらい噛みついてくるネコだったが、私(おうる)の不自然な寝かたにナニカを感じたのであろう。嬉しかった。彼のためにも、私(おうる)は重い腰をあげた。
甚だ残念なことに、彼の好印象な姿はあとにも先にもそれきりだった。あまり家にいない私(おうる)に対して、常に縄張りを主張してきた。そしてそのたびに、彼は手酷い仕打ちを受けるのであった。枕に、毛布に、そして私の足に、粗相をされて黙っているわけにはいかない。

そして現在は、いまは亡きガブの力を借りずとも、快適に旅立てる方法を模索中である。