博士の愛した数式

地上波に降りてきたので、観た。
私(おうる)は、間違った教育と鍛錬のダブルパンチ*1の賜物によって「算術」のできないカラダになってしまい、以降純粋理系(理論系)と工学系への道を重い鉄扉の彼方へ閉ざされたのだが、そのぶん、抑圧された数への意識は世間的標準よりも遥かに強い。また、自分にないものへのあこがれとして、頭のいい人はものすごく好きだ。だから、この映画も楽しく観ることができた。
しかし、私にとって映画が私(おうる)にとって楽しかったかどうかなどという問題は正味な話たいした問題ではなく、むしろ鑑賞中もっとも気になったのが、先生になったルート君も、博士も、板書する漢字や数字の筆順が結構出鱈目だったという事実だ。「靴のサイズは」→「24」→「24 は 4 の階乗です」というやりとりに「これだから整数論って据わりが悪いよね、足のサイズが自然数に還元される部分にはなんの違和感も感じないのかな」というシチュエーション台無しのノイズを発生させて肝心の数字とたわむれることもなく、飽きたらず主題とは全く無関係の国語領域に神経を持ち去られる自分は最早「元理系」を標榜するのもやめたほうがいいような気がしてきて少々凹んだ。何故なら、「理系をやめた」ところでいまの私(おうる)には行く先などどこにも無いからだ。立つ瀬無いよね、ほんとに。
別に某所で短文指摘されてそれが図星だったからって拗ねているわけではありません。ありませんから。というか既に書けてないって自分で記してますから*2
…ええと気を取り戻しつつ。どうでもいいのだけど、「博士」の住まわっている離れにはいくつかの黒板があり、そのうち玄関のものには小学校よろしく日付が書かれている。映画の中に出てきた日付は「3月30日(月)」「4月7日(月)」「5月12日(月)」。また、離れのキッチンには少々旧型だが電子レンジが置かれていた。電子レンジが一般に発売されたとされている 1962年以降で、4月7日が月曜日なのは 1969, 1975, 1980, 1986, 1997, 2003年。よってこの映画の舞台はこのうちのいずれかの年ということになる。また、ルート君の誕生日である 5月18日の夜は「ほぼ満月」であった。

5月18日の月齢

1969年 ……  2
1975年 ……  7 
1980年 ……  4
1986年 ……  9
1997年 …… 11
2003年 …… 17

この条件を当てはめると、該当するのは 2003年のみとなる。(5月18日の夜のシーンで月が出たのは池に映ったもののみだったが、どう見ても 11齢かそれ以下ということは無さそうだった。)従って、この映画の舞台は、映画公開年 原作の発行年と同じ 2003年ということでよさそう。…以上。
…いや、ちょっと待て。映画の中の「現在」においてルート君はもう成人して、高校で教鞭を執っている。つまり「現在」は「主たる舞台」である博士との出会いから少なくとも 11年は経過していなくてはならない。要するに、映画の中の「現在」は「近未来」、つまり SF ってことかこの映画。いやでもルート君の思い出話ってことは「現在」を今より未来にする必然性が…だから、何が言いたいのかというと、おかしいではありませんか*3! 
…って、何やってんだ俺。阿呆か。阿呆って言うよりは、くだらねぇ奴。
蛇足ついでに。「愛した数式」の解釈については、私(おうる)も「いっぱいのあいじょう」説に一票。しかしそれだけでなく、「-1」は「命がひとつ失われた」、つまり堕胎された子供を意味し、映画の中で描かれた過去の悲しい結末を表現したのではないだろうか。ただ、その解釈(つまり「1」の意味する内容)はストーリー進行上、後半で変化したはずで(おそらく 1 を移項したことに数学者らしからぬ*4重要な含意があると考えられる)、どう変化したのかについてはまだ読み込み不足である。

■ ちょい追記

まあ、↑上も結構修正追記をがんがんやっているわけだが。
未来でもいいのなら、4月7日が月曜日なのは 2008, 2014, 2025, 2031…年が該当する。

2008年 …… 13
2014年 …… 19 
2025年 …… 20
2031年 …… 26

つまり 2008年でもよい。ってもうほんとどうでもいいなこれ。
因みに曜日と月齢を調べたネットコンテンツは以下。(要するにこれを記しておきたかった。)

■ 上の件について追記しました

http://d.hatena.ne.jp/owl/20070523/books

*1:小学校低学年の頃、NHKラジオのそろばん教室を受講し、新鮮な気持ちで数字とたわむれる気構えを失った。小学校高学年、計算ドリルの強制により計算がトラウマとなり、加えて間違った計算を放置する小脳モデルが形成され、固定化した。

*2:でも自分以外の人間から改めて指摘がかかるとそれはそれで格別だよね。…いえ他意はありません。ありませんから。

*3:どうやら「先生になったその後のルート君」というプロットは原作には無いものらしい。そのへん何か関係があるのかな。

*4:ここは博士の人物設定とは無関係で、原作者が数学者あまつさえ理系でないということが関係しているというのが私(おうる)のたった今考えついた憶測。ただまあ憶測とはいえ、中間に出てきたあの手紙には大きな矛盾があるといわざるを得ない。ここには書かないけど。