加齢臭の原因物質についてちょっと調べてみたのだが

ちょっとのつもりがかなり大変なことに。もうほんと素人にはなんでこんな敷居が高いのだろうか。

 一方、男女ともに中高年特有の体臭(加齢臭)は、皮脂に含まれる「パルミトオレイン酸(引用者註:後述の内容に注意)が分解されてできる「ノネナール」と呼ばれる物質が原因だ。パルミトオレイン酸(引用者註:同上)は30代までの人にはほとんどなく、40歳を過ぎた頃から急増する。また、男性の方が女性よりも皮脂の分泌が多いため、この加齢臭もより強くなる傾向がある。
健康プラスα 気になる“おやじ臭”のもとを断つ (05/03/03) - nikkeibp.jp - 健康

というような記事が「web巷」にはあふれているわけだが、どうもなんかあれだ、ノネナールだったりノニナールだったり。*1化学の世界では物質の名称で「e」が「i」や「y」になると(つまりここでは「ネ」が「ニ」に変わると)まったく違う性質の物質になってしまったりするから、そのへん結構重要だと思うのだが。それに、「パルミトオレイン酸」って、オレイン酸のニセモノみたいなその物質はなんなんだ。オレイン酸は汎用名ではないからニセモノとか無いような気がする。接頭語みたいなことになっている「パルミト」のうち「パルミ」はパーム椰子のことだろう。しかしそのうしろの「t」は気軽に捨て置いてよさそうなものでもなさそうだ。
別のところでみると

 体臭の発生には、病気、体調、体質、生活習慣などの影響に加え、最近になって、年齢に伴って発生する「高齢臭」と呼ばれる体臭の存在が確認されました。中高年になると皮脂中に「9−ヘキサデセン酸(パルミトオレイン酸)」という脂肪酸が増加します。若い人にはほとんど存在しない、このパルミトオレイン酸が分解されて生じるのが、揮発性アルデヒドの一種で高齢臭の主成分である「2−ノネナール」という物質です。
「トレハロースが中高年特有の体臭の発生を抑える」((株)林原 プレスリリース 1999/09/11)

ここでは(1999年の発表なのでまだ「高齢臭」と呼んでいたりするところに時代を感じるが)パルミトオレイン酸は「9-ヘキサデセン酸」とも言うらしきことが書いてある。こちらの呼称のほうが IUPAC っぽい*2。…まさか、ヘキサデカン酸のことではあるまいな。「セ」と「カ」の単純な読み違い? これの別名は化学辞典にも載っている「パルミチン酸」だし。…いやでもまさかプロが飽和脂肪酸不飽和脂肪酸を取り違えたりするだろうか*3(日経ならまだしも、林原研究所だからね*4 )。飽和だとしたら「9-」の意味がない*5ノネナール(nonenal)は C9H16O であるようだし、だとすると名前からしても「ノネン+アルデヒド*6つまり二重結合を 1組持つ炭素数 9 の鎖式不飽和炭化水素アルデヒド、ということで、数も合う。つまりC6H13-CH=CH-CHO 。IUPAC は「non-2-enal」でいいのかな*7
でもって、もう少ししつこく探していたら、やっと見つけた。

うわー。要するにどっかの健康志向の食品企業かなにかが「オレイン酸」と付いてれば耳馴染みがいいから「パルミトレイン酸」を「パルミトオレイン酸」にしちゃったとかそういう話か。マカダミアナッツなどにも含まれるらしいが、Wikipedia によれば「魚油」だそうだ。言い方は悪いかもしれないが、別に「これ」が特にどう、ということも無い、ありふれた不飽和脂肪酸の一種。
なんかまあ大体わかったような気がしてきたのでよかったが、疲れた。因みにパルミトレイン酸はC6H13-CH=CH-C7H14COOH …で、C16H30O2 。なんでこんなまどろっこしい書き方をするかというと、そうすることで私(おうる)が「わかった気」になれるから、ただそれだけ。で、こいつが酸化されるってことは…ええと、…ええと、…*8
…もうやめときます。これ以上考えてるとパルミトレイン酸(と活性酸素)がどばどば出てきそうだ。(註:もう出てます) 化学の中の人に mixi 経由かなんかで訊こうかと思ったけどなんか気がひけたので、やめた。身に覚えのあるかた(というか、ゆうきのあるかた)、どなたか助けてください。

*1:はてなキーワードノネナール」も、書いた人には悪いが正直何を言っているのかわからない。どうせどこかからの劣化コピぺだろうけど。

*2:「っぽい」だけなのだが。

*3:あとで落ち着いて考えたら、hexadeca (= 16)+ ene だからなんの問題もなかった。とはいえ、個人的には、「c」の発音の変化にはどうも馴染めない。

*4:と思ったけれど、前言撤回。このプレスリリースの中にも誤植(「パ」→「バ」)がある。恐らくこのウェブコンテンツは印刷原稿の再書き起こし、若しくは PowerPoint ドキュメントかなにかの焼き直しなのだろう。

*5:無くはないのかもしれないが。アルデヒド基の位置を示すのかもしれないし。

*6:nona (= 9) + ene (= 二重結合を含む不飽和炭化水素) + al (アルデヒド)

*7:CAS:2463-53-8 。cis- か trans- かはわからなかった。後述の化学変化を汲むと cis- ではないかと思うのだが、CAS No. が見付かったのは trans- のほうだけ(18829-56-6)だった。
ほかには以下のような isomer が見付かった。
 ・cis-6-nonenal:2277-19-2
 ・cis-3-nonenal:31823-43-5
…やはり最後の 1ピースが紛失しているかのような感触。どうもよくわからん。

*8:パルミトレイン酸から 1個ノネナールを取ると、炭素 7個 水素 14個 酸素 1個 …ヘキサナールか? いやそれじゃ単なる分解?(あでも電子の動きがあれば?しかし一体どんな?) てことはヘキセナールと水素分子 2個? 活性酸素がどうこうってことは、副生成物は水?(あでも水が取れたりくっついたりってのは別のカテゴリになかったっけ?) 炭化水素アルデヒドになれば確かに酸化でよさそうだけど… それともカルボン酸がアルデヒドになってる時点で酸化されてるってことでいいのか? ってそりゃ思いっきり逆だろ……うわぁぁわかるかこんなもん!(高校生か<(_ _)>)