両替事情

両替を無料でやってくれる金融機関がどんどん減っている。
無理もない。両替は、手間と経費のかかるサービス作業だ。実際、両替にかかるコストは(金種と枚数によって全く異なるが)真面目に弾けば数10円に達する。全くもって割に合わないのである。両替機の維持だってタダではない。そもそも、「棒金」(硬貨を 50枚束ねてラッピングしたもの)と ばら銭 50枚は、同じ価値なのである。計数とラッピングのコストは考えない。通貨以外の世界ではありえない話だ。ありえない話がまかり通る、それが通貨の世界。
では今までは何故タダだったのかというと、「金融機関=両替商なんだから、両替ぐらいタダでやって当然だろう」という「常識」のもと、採算とかその他を度外視してサービスしていたのである。しかし、この厳しき折、コストフルなサービスを放置するわけにもゆかず、有料化に踏み切る金融機関が出てきた。すると両替のニーズは無料でサービスを続けているところに殺到する。結果、そこも有料化せざるを得なくなり、現在、完全無料で両替をしてくれるところは、ほぼ無いに等しい。
勿論、利用方法次第では「実質無料」になるところはまだまだある。例えば、その銀行の口座を持っていれば、その口座のキャッシュカードで両替機が使用できるところなど。ただ、1枚のカードで両替できる枚数に制限があったり、1枚のカードで両替できるのが 1日 1回までであったりする。ところがこれを逆手に取り、その銀行の使用していないキャッシュカードをかき集め、複数枚のカードを使用することで 1度に大量の両替を行う行為などが横行しているのが現実だ。小売店にとって釣銭の準備はいわば生命線であるから、必死になるのもわかる。だがしかし、こういうような共存共栄のための措置を鼻で笑うようなやり方は、なんともいただけない。
最近のショッピングモールなどでは、管理部門が両替機を設置し、店子はそこで両替ができるようになっている場合が多いようだ。流れとしては至極当然。でもって個人経営のお店など多くのお店はやっぱり近所の金融機関を頼らざるを得ないわけで、ここでまたかなりの経費をかける*1ことになるのである。勿論、かかるのは顕在コストだけではない。
コスト計算が大事なのはわかるけど。 嗚呼、世知辛い。

*1:時給 800円の人間が両替のために 15分並んだとすると、単純に 200円以上の経費(会社の費やした経費ということであれば通常その倍以上)が徒に消費されているわけだ。