ウォーキングリポート

徹夜作業になるはずが、「律速段階*1」のおかげで早朝までの時間がぽっかり空くという。なんだか。…だったら今の精神状態からして、ほんの数時間でも別の空気を吸ったほうがいい。「じゃ、私は帰ります」とすかさず告げ、許可を取り付ける。
最寄り駅(JR)のホームからは歩いて約5分。先日調べた終電情報によれば 24:50 過ぎまで帰宅可能…なはずだった。ところが実際の終電は 24:40 。なにを勘違いしていたのか。ともかく、10分程度の余裕を見て出たはずだったのが、駅に着いたときには京浜東北線ホームの次発時刻表示は消灯されていた。その時間差、わずか 2分。残るは山手線、品川止まり。
あまり考えずに来た電車に乗る。
泥酔状態のサラリーマンから距離を置きつつ、さて、この先どうしたものかと考える。品川からタクシーでも拾うか、それとも品川までのどこかで降りてカプセルホテルにでも泊まるか。あるいは始発まで品川駅で過ごして始発で一旦帰り、シャワーだけ浴びてとんぼ返りするか。そうしても 1時間ぐらいは寝ることができるはずだ。ともかく、現場に戻るという選択肢だけは私(おうる)には無かった。
ふと、以前も考えて断念した計画がふと頭にひらめく。そうだよ、歩けばいいじゃん。常備している地図を取り出し、大まかに距離を測る。10km 強、といったところか。ならば私(おうる)のペースで歩けば正味 3時間で踏破できるはず。4:00 に帰宅できれば 2時間はしっかり寝られる。始発で帰るよりそのほうがいいかも。よし、決めた。なにより、今これをやらずにいつやるというのか(←そもそもが大間違い)。
品川駅には 1:06 到着。さて。方角を確認し、改めて意を決する。前半はできるだけ時計は見ないようにしようと決める。「東横ホテル」の前を通りかかり、一瞬意志が挫けそうになるが(というかなにを意固地になっているのだろうか)、気にせず素通りする。
以前は機に応じて、日中 10km 以上歩くなんてことも平気でやっていた。地点移動も、休憩を削って 6km (1時間)歩いたりとかもやった。公共交通機関を使えっていう話なわけだが、会社に小口請求するのが鬱陶しいというそれだけの理由で歩いた。そもそも、生物の調査のときはルートセンサスで 5km 、複数項目あればこれを 何往復かする。歩くのは全く苦ではなかった。
いま、それができない自分がいるとしたら。そんなものは断じて認めない。10km 歩け、と言われて躊躇するような人間ではないと信じたい。(とはいえ、寝不足が続いている中で深夜までの作業、そのあとに重い荷物を背負って雨の中夜通し歩くという今回はちょっと事情が違いすぎるかもしれない。)
ともかく歩く。最近は、日頃歩くときには「いかに速く歩くか」を考えながら歩いているから、なにも考えていなくても一旦「歩け」という指令を出せば脚は勝手に動く。と言うかこういうときはあまり考えないほうがむしろいい。その、あまり考えない時間が今の私(おうる)には必要なことだと信じる。折しも冷たい雨の降る夜。血の昇りかかった頭を「冷やす」にはある意味好適。
カバンが肩に突き刺さる。止せばいいのに、こういうときに限って水筒とか、予備食糧とか入っていていつもより重い。(あとで重さを量ったら 7.2kg あった。自分でも思う、一体何が入っているのかと。)今回、帰宅を阻む障害を挙げるとすれば最大のものはこの背中の荷物だ。
途中、ファミレスで休憩。

普通にハンバーグとか喰ってるし。でも、洋食セットのくるみパンはなかなか美味でしたよ。
30分ほど休んでから出発。あとはもうひたすら歩くのみ。港区〜品川区〜大田区附近の国道15号はさしたる起伏もないのが幸い。残念ながら一時小止みになっていた雨はやや強くなってきており、傘をささずに歩けない。これもまた微妙に体力を奪う。もっと頭を冷やせ、ということと解釈しつつ更に歩く。途中「蒲田 3km」の文字に勇気づけられつつ歩くと、やがて以前歩いたことのあるエリア*2に到達。これは心強い。そして、予想外に早くゴールできそうな気配。東邦大学医学部付属大森病院の前は静まり返っているが、真夜中の病院前が騒々しいそのことが良いことであるはずもなく。
いよいよ生活圏に入る。駐車場の脇で都合 3回目の、そして最後の休止。小休止は荷物を下ろして 60秒。最近の運動不足、および準備運動などせず挑んでいるからそれ以上休むと筋肉が硬直する。さて、あと 10分。
家に帰着したときには、カバンは勿論、ジーンズの膝下までじっとり濡れていた。歩いているあいだには気付かなかった。ともかく、到着。時刻は 3:15 頃だったか。また 6:00 には活動を始めなくてはいけないわけだが、自宅にてしばしの regain 、および recharge 。またつらい 1日が待っているがそのことはあまり考えない。

*1: (rate-) determing step 。化学用語。→ http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/ES_KHS_NT2_09.html#anchor394093
転じて、作業の進行を滞らせる奴のことをいう。

*2:大森から蒲田の 1駅区間は 2年ほど前に踏破したことがある。このときは日中だったが、このときも雨だった。(雨だから歩いたのだけど。)