湿度は上がるのか

石油ストーブ、ガスストーブ、勿論石炭ストーブもそうだが、燃料を直接燃焼させるタイプのストーブでは、ストーブの上に薬罐など置かなくとも水分が空気中に補給される。
CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
1mol の天然ガス(簡単のためにメタンのみとする)が燃焼すると 2mol の水蒸気が発生する。東京ガスから供給されるガス(13A)は 11,000kcal/m3(≒12.8kWh/m3) 、ガスストーブのデータによれば 6畳間用のもので運転能力 2.2kW とのことで、1時間あたりのガス消費量は 約0.17m3。常温のガスを 24L/mol(=0.024m3/mol) と見積もれば 約7mol ということになる。これだけのガスが燃焼すれば空気中に 約14mol の水蒸気が放出されることになる。水分子の分子量は 約18g/mol であるから、約250g/h(=約250mL/h)。
これは小型の加湿器並みの量(あるいはそれ以上)である。
仮に閉め切った 6畳間(6×3.3m2÷2(床面積)×2m(高さ)≒ 20m3)を想定した場合、ガスストーブの運転 1時間につき おおよそ 12.5g/m3 が供給されることになる。もしこれだけの水分がもっとも効率よく室内空気の「湿度」に寄与するとすれば
比湿(水蒸気量)(g/m3)=217×水蒸気圧(HPa) / 絶対温度(K)
であるから、20度C において 12.5g/m3 の水蒸気分圧は 約16.9HPa 。理科年表によれば 20度C における飽和水蒸気圧は 23HPa前後 なので*1、仮に室温が一定などの諸条件を仮定すれば、湿度は 1時間につき 73% 程度ぶん、上昇することになる。(室内の水蒸気は 2時間以内に飽和することを意味する。)
「室温=外気温」の状態から部屋を暖めるとした場合はどうか。外気を気温 5度C・湿度 40% 、目標室温を 20度C・湿度を 60% と仮定して計算すると、外気の水蒸気量は 2.69g/m3、室内の水蒸気量は 10.22g/m3。この差 7.53g/m3 が供給されるのに要する時間は 0.6時間、つまり 36分間。因みに電気ストーブなどにより、外気をそのまま室温まで上昇させると湿度はわずか 12% にまで低下する。
実際は、結露や壁材・家財などにより空気中の水分はかなり奪取されるため、放出された水分がすべて「湿度」に寄与することはありえない。同時に二酸化炭素も室内に放出されるから、換気も考えなくてはいけない(、だから、閉じた系で考えてもあまり意味はない)。だがしかし、1.8L の薬罐が一晩で空になるのとちょうど同程度の水分が、ガスの燃焼だけで供給されているのである。
結論。ガスストーブや石油ストーブの場合、薬罐を乗せなくても、充分な加湿がされている。



と、久々に無駄な計算をして遊んでみた。ほんとうは、こんなことをしている場合ではない。

*1:後日追記。表から補完して約、なんてことを言わずに計算すればいいのであった。ということで、20度C における飽和水蒸気圧は 23.39hPa 。