新聞紙

靴をいちはやく乾かすには、新聞紙がよい。
大人用の運動靴(片方)で新聞紙 2枚分程度、少し多すぎるのではないか、という量を詰めるつもりがよい。紙面を半分ぐらいに切って丸め、きっちり詰めて放置する。新聞紙は丸める前に一旦くしゃくしゃっとやってしわを多くしておくとよい。これはとりわけ、詰める新聞紙の量が少ない場合に有効である。
寝る前に新聞紙を交換すれば(濡れ程度の甚だしい新聞紙を捨て、その分を補充する。濡れていない部分が靴中に当たらないよう丸め直し、詰め直す)、翌朝には履いても不愉快でない程度に乾燥しているだろう。このあと新聞紙を取り出して小一時間も乾燥させれば(あるいはドライヤーなどでしばらく吹けば)更に具合がよい。



地学(地質学)を学ぶ者は、巡検(フィールド・エクスカージョン;野外実習)において、靴中は勿論、膝上まで水に浸かるということを、教わる。沢筋において下手に躊躇するとかえって危険である。晴れていようが雨だろうが(ときには雪だろうが)、靴が中まで濡れるのはデフォルトなのである。一旦しっかり濡らしてしまえばもう、さほど気にならなくなる。そういうものだ、ということを「教わる」。
ただし、そうした「教育」によって「危険」に対する意識が低下しないとも限らないことを忘れてはいけないと私(おうる)は思っている。過去には溺死した geologist もいる。
問題は、その「濡れた靴」を一旦脱ぎ、再び履くときである。不愉快、というよりは、技術的に困難な作業であることが一度でもやってみれば判る。(濡れた衣服、水着などをそのまま着ることを想像してみるとよい。)もし靴を脱いでから再び履くまで小一時間もあるのであれば、この時間だけでも新聞紙を詰めておけば、休憩後には大概「履ける靴」になっている。

学生時代、正課の巡検の途中、突然の豪雨に見舞われたことがあった。雨如きでは最早躊躇することのない我々ではあったが、その雨量たるやあまりにすさまじく。更に言えば、地質のフィールドワークでは鉛筆で「ルートマップ」や「露頭スケッチ」を描いて(書いて)ゆくことが必要なので、意外と雨に弱い。たまたま生物学部附属の臨海実習場が近かったので、改築新装されたその実習場の見学も兼ねて、休憩させてもらうことになった。
その実習場は宿泊施設が併設されており、最大 30名程度の宿泊実習が可能となっている。常駐の技官さんもいる。我々は食堂に通され、激しい豪雨の通過を待った。少しかかりそうだ。私(おうる)はその間に靴を乾かしておこうと思い立った。技官さんに「古新聞があったら頂きたいのですが」と言うと、快く分けていただけることとなった。
技官さん「押し花でもされるんですか?」(笑顔)
私(おうる)「………靴を乾かすんです……」(苦笑)
このときの恥ずかしさといったらなかった。コトホドサヨウニ、風流人への道のりは遠い。

押し花を作るのにも、新聞紙は最適である。植物調査のひとたちは「野冊」(やさつ)に新聞紙を挟み、この中に採集した植物を挟んで持ち帰る。「野冊」はスケッチブックで代用が可能(まあ意外となんでもいいらしい)*1

*1:竹を編んで作った所謂「ホンモノ」はとんでもなく高価なのである。(それでも、ということであれば、志賀昆虫普及社(渋谷区・道玄坂上)とか虫友社(荒川区・西日暮里)みたいな昆虫採集用品を扱っている店に問い合わせをしてみるといいだろう。志賀では販売しているのを確認したことがある。勿論購入したことはない。正直、百均やホームセンターで使えそうなものを探せばそれでいいような気がするが。)