エレベータに寄せて:唯一の蘊蓄

もともと父親とはあまり話をしなかった。父親の仕事の話となるとなおのことだった。そんな父親が、自分の扱う「商品」について唯一教えてくれたこと。
日本では、エレベータに乗り込むと 10人が10人とも「回れ右」をして、入ってきた扉のほうを向く。アメリカでは、そんなことはない。入ってきたそのままの向きで乗る。何故かというと、エレベータには 2つの扉があり、入ってきたのとは反対側の扉から降りることができるからだ。そのほうが便利。そのほうがスムーズ。日本のエレベータだってそうすればいいのに、と思うだろう、しかし日本では人員用エレベータに二面扉は使えない。認可が下りないのだそうだ。(【後日追記】その後、東京日本橋の商業施設内で二面扉エレベータを見かけた(というか、乗った)。21世紀に入ってから規制緩和があったのかもしれない。また、人荷用ならば従来より普通にある。)
そういえば父親は「東博(東京国立博物館)のエレベータは俺が入れた」とやや自慢気に語っていた。私(おうる)は残念ながら東博にはほとんど行くことがなかったので、「科博(国立科学博物館)ならよかったのに」などと、内心思ったりしていた。ちょうどその頃に東博で開催されていた特別展の割引入場チケットを父親からもらったが、結局行けずフイにした。
科博は「博物館学芸員実習」でお世話になった博物館んであるからして私(おうる)の思い入れもひとしおなのである。でも、東博は言わずもがな、科博にすら、もうここ何年も行っていない。