早過ぎた

小さい頃、乗り物のにおいが苦手だった。タクシーの車内のにおいとか、特急電車の中のにおいとか、堪えるのがやっとだった。乗り物酔いも酷かった…というか、においがダメだから気分がすぐに悪くなった。そんなわけで、旅行は億劫だった。家族からはしっかり迷惑がられていた。駄目な奴、使えない奴扱いされていた。
いま思えば、あれはいまでいうところの「化学物質過敏症」というやつだ(った)。いまだったら「いいからあとちょっとなんだから我慢しなさい」なんていわれたりもせず、肩身の狭い思いも、つらい思いもせずに済んだことだろう。
いまのこのときに少年時代を過ごすのがシアワセかどうかはよくわからない。しかし少なくとも、こと乗り物に関しては、私(おうる)は生まれてくるのが少々早過ぎたようだ。