IT が辞書を変える、と思っていたのだけど、現実は

まだ IT という言葉が流行る以前、「逆引き広辞苑」なるものが発売された。私(おうる)は、「んなもんわざわざ出版しなくたって、デジタル(テキスト)データで持ってれば検索一発じゃないのかな」と思っていた。

勿論こういう書籍の存在価値が無いとは言わないが、日本の冠たる出版社「岩波書店」が web 上で公式に「駄洒落を作るのにも使えますよ!」なんて書いているところを見ると、まこと鼻白む、というか、えもいわれぬ苦しさを禁じ得ない。「使い方いろいろ」といったって、どれも「逆引きしかないから仕方なく逆引きを使う」程度の用途であって、優秀な類語辞典若しくはシソーラスエンジンがあれば「音」にバインドされる必要もないのだ*1。コアとなるデータは 1個(1冊*2)でいいはずだ、これをどう検索する(できる)か、によってその辞書の価値が決まる、みたいなイメージ。類語・対義語辞典もわざわざ独立した書籍として出す必要もない。データ構造をそれなりに工夫しておけば、あとはそれをどう抽出するかのみにかかってくる。
これは特に、英和 - 和英辞典みたいなもので威力が発揮できるはずだ。(純粋理想的には)相互変換なのだからコアデータは 1個でいいはずだ。それをどう引っ張るかに真の価値がある。
CD-ROM 辞典が発売されるようになってから優に 10年以上が経過している。web 辞典が普通に利用できるようになってからを考えてももう 5年ぐらいにはなるんじゃないか。で、状況はどうかといえば、なにも解決されていない。いまだに英和と和英は出版されているものをそれぞれ別個にででーんと載せているだけ。データは相互利用されている様子の片鱗も伺えない。「電子辞書」だって、既存の出版物のデータを丸々そのまんま載っけて自慢げに「辞書 40冊分!」なんて言っている。IT で培った蓄積が出版物のほうにフィードバックされたという話も聞かない*3
言語学者や編集者は、この 10年、いったい何をやっていたのだろうか。

■ そもそも

なんでこんなことを書いているのか、というと、「直角」の英訳語を livedoor辞書で調べてみたことがきっかけ。こちらでベースになっているプログレッシブ英和(和英)中辞典(小学館ISBN:4095102047ISBN:4095102535)がどの程度のグレードに位置づけられる辞書なのか詳しくは知らないのだが、\3,360.- という価格や「中辞典」という名称から判断すると、少なくとも小中学生が使用する初等英語学習者向けのものではないだろう。そんな辞書で調べても、「直角」の訳語はひとつしか無い。「平行」「parallel」から対義語をあたってみようかと思ったが、出ていない。「直交」で引くと「orthogonal」「rectangular」の 2語が出てくるが、これらを英和で引き返すと「直角」の語が出てくる。しかも片方からは「直交」の語は出てこない。これっておかしくないか。ほんとおかしくないか。
小学館の辞書がひどいだけだとは、私(おうる)は思わない。
(ただで使っておきながら何をエラソーに、とか言われそうだな、こういうこと言ってると。)

■ 追記

  • 「並行」の対義語は「逐次」で多くの場合オッケーのはず。(parallel ⇔ serial)
  • 「平行」の対義語は必ずしも「直角」(「直交」)ではない。「交叉」(「交差」、「非平行」、「斜交」)の場合もある。(parallel ⇔ cross)

■ もうすこし追記

こういうことを書くと恐らく「全くこれだから素人は困る。他言語翻訳において訳語は一対一ではないのだ、だから英和には英和の、和英には和英のデータベースがそれぞれ必要なんじゃないか。歯牙にもかからん。」とかいうぼやきが予想されるわけだが、そこをなんとかせずに何が言語学者だと言いたい、というのが拙文の趣旨であるから、そういった言説は端から当たらない。【2006/06/14】

*1:端的な例が上掲ページでも挙げられている「雨」である。雨関連語を逆引き・正引き辞書で探しても「雨打」(ゆた)とか「打ち時雨る」(うちしぐる)なんかは出てこない。「五月雨」(さみだれ)なんかも怪しい。つまり、逆引きでは必ず取りこぼしが出てくる。
なんというか、「あんたら無知やから辞書引いてるんちゃう? せやったら「この程度」で我慢しとかんね」とでも言わんばかりの雰囲気を感じる。これが単なる個人的なひがみであって欲しいと切に願うのだが。

*2:ワンセットの意

*3:私(おうる)が知らないだけかもしれないのだが、少なくとも私(おうる)の手許に利用可能なそういったものは、いま現在、無い。

口を酸っぱくして言っているわけだが、私(おうる)は読書が嫌いである。

もうなんかほんとうにどうでもいいといえばそれまでではあるのだが、私(おうる)は読書が嫌いで、且つ、苦手である。だから、「碌な読書をしない」。
前置きはさておき。

素光さんのところより。(「隷属SE」っていいなあ。) 私(おうる)の PC セットアップスキルは Windows ME あたり(MacOS 9.2 あたり)でぴたりと止まっているのだが、それは現在の自分自身がいまだに Windows98SE マシンを使用していることと切っても切れぬ関係にある。正直なところを言えば、他愛のないトラブルシューティングであるとか PC を扱いやすくする Tips めいたものであれば、大体想像がつくので、ほんの短時間そのマシンをいじらせてもらえば 50% ぐらいの課題をクリアする自信はある。ポケコンMSX2PC-9801 シリーズ、Macintosh と、主にハードウェアへの興味からせっせと取り組んできた経験から、「コンピュータというものが大体なにをやっているのか」が大筋でわかるおかげである。分解修理をしたり、本来ありえない設定で無理矢理周辺機器を接続したりということも結構やってきたし、コントロールパネルとシステムのプロパティ(のデバイスマネージャ)がおともだちだったこともあるし(あと機能拡張フォルダね)、幸か不幸か大学でも会社でもさまざまな古いマシンだとかちょっとお茶目な周辺機器なんかに鞭を入れて使用するシーンがしばしばであったから、実用レベルの経験値はめきめきと上がった。
しかし、現行マシンを使う機会のないまま長期間を過ごしていることによって、残念ながらいまの私(おうる)における絶対的・相対的なスキルはものすごい勢いで低下している。
ただし、ソフトウェア・ハードウェアの進化によって、現実的には、PC を扱うための特殊技能の必要性は、こちらもぐんぐん低下している。両者がともに暴落する中、では今日日の PC 遣いには一体何が必要なのか。ぶっちゃけこれもまあ大筋ではわかるし、その総体としての必要性はむしろ臨機応変といえるであろう。といいつつも、そろそろごく一般的な内容を整理しておく必要性を感じていた。それも、高度な内容ではなく、PC を買うかどうするか、というような最初の最初からやるような場合、なにとなにを用意すればいいのか、みたいな。
正味な話、それが「いま」必要なのかどうかはわからない。上掲の書籍も 2年後には間違いなく(下手をすると 1年後には早くも)内容が陳腐化しているであろう。…まいいか。(いいのか。)で読んでみる。
平易な内容で、説明も一応噛み砕いてわかりやすくする努力をしつつ、必要なことをひととおり網羅しているという印象。この程度なら、女子が読んでも大丈夫だろうな、という程度にまとめられていて、なんか悪気がない。一部余計な記述があったり( 2人だけの HP を開設、とか)、誤字脱字が多かったりするのは気になったが、この書籍を足がかりにセットアップとかメンテナンスとかしてゆけばかなり普通に使いやすい、「生活道具として使うこと」を重視した個人使用 PC 環境が出来上がってゆきそうな印象を受けた。
軽い味付けとして描かれている「設定」には相当無理がある。普通のオタ青年には「オタである彼よりも PC スキルに卓越した兄貴思いの中学生の妹」など、いない。いや、そのへんは正直どうでもいい。大筋において「イロモン」であることには変わりがないから。
飽くまで「熾火研究所調べ」では、この書籍は『彼女持ちの男性のPCスキルアップ本』*1であろう。この内容をマスターしたからといって彼女ができるわけではないし、既存の彼女を失わずに済むわけでもない。どちらかというと女の子(まあ彼女に限らぬ)からいきなりパソコン(主に個人所有の)について相談を持ちかけられた*2ときに、必要以上に動揺せず、幸運にもせっかく授かった「期待」を取りこぼさずこれにきっちり応えるための参考にすべきもの、かもしれない。女の子と普通に四方山話ができる状態にまでは自力で持っていきましょう。
逆にこれは、女性が読んで「ああ男の子にはこういう下心があるのね」という発見ができる書籍かもしれない。ひょっとしたら女の子は男どもが「あわよくばこういうことを狙っている」ということを意外と知らないのかもしれないし(男にとっちゃ至極アタリマエだったりするのだが)、さらに「こういうふうなきっかけなら男は女の子に一歩踏み込みやすい」ということを知るきっかけになるかもしれない。ほらあれだ、「(AV 機器の)配線わかんな〜い!」と誘う女の子の PC 版、みたいな。*3 勿論、下手な誤解を与えないためにはどうしたらいいのか、という方面も含めて。*4
読みたいかた、お貸ししますよ。
男の立場からすると、「PC 購入を手伝って欲しい」という「お誘い」は非常に効果的だと言える。こういうときに男どもは「今日日は通販による BTO のほうが…」などとすかさず切り出してはいけない。たとえ現実にそうだとしても。
この書籍、しかしひとつ落とし穴があった。こういう「恥ずかしい本」は、カバーを裏っ返しにして「まっしろ」にして所有するのが常であるのだが、今回もニュートラルな気持ちでそれを実行しようとしてカバーの「裏側」を見て度肝を抜かれた。そこには、本来の表紙よりもさらにオタ度の数段高い、「パジャマのはだけた女の子の絡まったイラスト」が描かれていたのだ(しかもカラーで)。意味がわかんない。
…まったく。どないせえちゅうねん。

しつこいようだが、私(おうる)は読書なんか嫌いだ。

*1:彼女ケアのカンどころを含む。『』内、猫蹴猫拳より引用。

*2:「こいつなら(オタっぽいから)なんかわかるんじゃねえの」という憶測のもとに

*3:余談になるが、「あなたヒューズ交換してくれませんか?」とか「電球切れちゃいました」とか、奥さんが旦那さんに電気まわりを頼むのは、ほんとうは「できないから」ではなくて、夫婦和合の秘訣だというエピソードがマンガ(確か「三丁目の夕日」だったはず)にあった。こういうステレオタイプな役割分担というのは、うまく導入すれば男女間円満の必殺テクニックだったりするということである(諸刃の剣だが…)。
現実には「女性は電気に弱い」かというと、必ずしもそうではない。しかし、こうした「枠組み」を男女という 2人関係に適用するのは悪いことではない。女性はこれをスパイスとして活用すべきだし、男性はこの期待に完璧に応えるべきだ。
因みに私(おうる)は一般論ではこういうの大ッ嫌いだ。(各論では…さあね。)

*4:以前、はてなだったか 2ch だったか、「知り合いのオタ男子に、そういう気は全くないんだけど、PC のメンテ頼むために部屋に上げたら誤解されるでしょうか?」という質問が上がっていたが、コンテクスト無視でごく普通にいえば十中八九誤解される。
…とかなんとかいうことを、かつて大馬鹿野郎だった歴史を持つ私(おうる)が言ってみるテスト。

もうほんとくどいにも程があるけど、私(おうる)は「読書」は嫌いである。

でも絵本は読まなければならない。…「ならない」ってなんだよ。

某所で見かけて取り憑かれてしまった。別にだんごむし系のスカベンジャーはとりたてて好きではない。むしろ、検索同定に非常に手間がかかるという理由から、好んで調べようという気にならない。…ってそのへんを仕事にしていた頃の悪い癖が結構抜けていないわけだが、これは今後の私(おうる)の人生を長い目で考えたときに非常にマイナスであるから、厳に反省しなければならないのだ。
そこまで考えなくとも、この本は、ターゲットを絞り込んだいきもの情報が深めの愛情とともによく織り込まれている。野生生物の擬人化が好きでない場合にはおすすめできないが、この程度なら目くじらを立てる必要もないだろう。
絵本としてはわりとじっくり読み、じっくり絵を見るタイプの本だ。
読みたいかた、お貸ししますよ。
だんごむしの絵本はシリーズ化されているようで、既刊が 3冊。
だんごむし そらを とぶ だんごむし うみへ いく だんごむしと恐竜のレプトぼうや
ただし、「だんご博士」は新聞に連載されていたものの書籍化であり、シリーズラインナップとはやや性質が異なるらしい。いまのところ私(おうる)はこのシリーズ購入の予定はないが、図書館などで借りて読ませるにはいいかもしれない。

しつこいようだが、私(おうる)は読(以下略)。